平成21〜22年度 |
研究課題名 A04-K3 | 数日スケールの気象が大気海洋物質循環に及ぼす影響評価・予測のためのモデリング |
研究代表者 | 藤井 賢彦 | 北海道大学 大学院地球環境科学研究院 |
研究概要 |
暴風雨など数日スケールの気象が、沿岸域の海洋生態系および大気海洋物質循環に及ぼす影響を現実的かつ詳細に評価・予測できるモデルは、環境動態解析のみならず地域経済・施策など社会科学的観点からも強く求められている。
本研究では、このような科学的・社会的要請に応え得る、再現性・予測可能性に優れた海洋生態系・炭素循環結合モデルの開発を目的とする。
研究の遂行にあたっては、観測的研究の知見も十分に援用していくことで、結果として当該領域と研究代表者・協力者らの専門分野との間の橋渡し的な研究とすることも目指す。
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研究課題名 A04-K4 | pH・栄養塩・溶存酸素・クロロフィルにおける地球温暖化の影響評価:検出と要因特定 |
研究代表者 | 見延 庄士郎 | 北海道大学 理学系 |
研究概要 |
応募者はH19-20年度の本特定領域公募課題である「酸素・栄養塩・pH の全球海洋変動解析」において,酸素・栄養塩について全球グリッドデータを作成し,またpHについては気象庁のデータを解析することによって.これらの変数に地球温暖化との関係が疑われる長期変化が生じていることを見出した.
これを受けて,本研究の目的は,歴史的観測データを用いてpH, 各種栄養塩濃度,溶存酸素,クロロフィルより,地球温暖化に関係する可能性が高い変動シグナルを検出し,その変化の理由を明らかにすることである.
研究領域は品質の高いpH データが得られる日本周辺海域を主とするが,大部分の解析は全球海洋について行う.
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研究課題名 A04-K5 | 北太平洋における海洋炭素、ケイ素、窒素循環と植物プランクトンの生理動態の解明 |
研究代表者 | Sherwood Smith | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究分担者 | 相田 真希 | 独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境変動領域 |
研究概要 |
本研究課題では、北太平洋亜寒帯域において特に植物プランクトンの生理動態に着目し、低次海洋生態系と大気・海洋間の炭素循環プロセスを解明する。
従来の生態系モデルでは理論的な生理動態プロセスが考慮されていないため、例えば鉄添加実験(SERIES等)で得られた観測結果とモデルの結果が一致しなかった。
この理由の1つとして、同一海域においても光環境と複数の栄養塩環境が変化すれば植物プランクトンの生理変化の応答が異なるからである。
そこで、研究代表者が開発した栄養塩取込式(SPONGE)を用いて新しい低次海洋生態系モデルを開発する。
また、これまで理論的に説明できなかったSERIES実験で特異に観測された植物プランクトン(珪藻)のケイ素の取込速度の変化(鉄濃度の減少と共にケイ素の取込速度が増加した)について、新しく開発した低次海洋生態系モデルでの解明を目指す。
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平成19〜20年度 |
研究課題名 A04-K1 | 酸素・栄養塩・pHの全球海洋変動解析 |
研究代表者 | 見延 庄士郎 | 北海道大学 大学院理学研究院 |
研究概要 |
本研究の目的は,地球温暖化との関連から注目されている海洋中の溶存酸素,見かけの酸素消費速度,各種栄養塩濃度,そしてpHの,全球における十年からより長期の変動の実態を明らかにすることである.
そのために,これらの諸量のグリッド・データを世界で初めて作成し,領域の内外に公開する.作成したグリッド・データを解析することで,溶存酸素や栄養塩濃度の変動が,どのような時間・空間構造を示し地球温暖化とどう関係するのか,さらにどのように海洋の水温構造や速度構造と関係しているのかを解明する.
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研究課題名 A04-K2 | データ同化による海洋表層循環変動のモニタリングと化学・生物過程とのカップリング |
研究代表者 | 石川 洋一 | 京都大学 大学院理学系研究科 |
研究分担者 | 池田 元美 | 北海道大学 大学院地球環境科学研究院 |
| 豊田 隆寛 | 独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター |
| 淡路 敏之 | 京都大学 大学院理学研究科 |
研究協力者 | 印 貞治 | 財団法人日本海洋科学振興財団 むつ海洋研究所海洋研究部 |
| 山西 孝宜 | 京都大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 |
| 仁科 慧 | 京都大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 |
研究概要 |
海洋表層の物質循環を考える上で、物理的な循環場、すなわち流速場、水温・塩分場などの3次元的な分布とその変動を正確に把握することは、生態系の変動メカニズムの解明とともに最も重要な課題である。
特に、化学・生物過程に関連した物質循環は例えば中規模渦の周辺の湧昇流などと関連して活発な生物活動が観測されるなど、時空間的に細かなスケールの変動に対して非常に敏感に応答するため、物質循環について解析を行うためには、時空間的に高分解能かつ高精度な物理循環場とその変動を再現が必要である。
そのような物質循環研究に要求されるレベルに耐えられる物理循環場を得るためのアプローチとして、様々な観測データを統合することにより、現実的かつ高分解能のデータセットを作成可能なデータ同化は最も有効であると考えられる。
本課題では海洋データ同化システムと生態系モデリングの融合のために、adjoint法高分解能海洋大循環データ同化システムを用いて物質循環研究に適した海洋表層循環とその変動についての統合データセットを作成することを目的とする。
さらに、時空間スケールの小さな生態系変動に対応するために、データ同化の結果とネスティングモデルを用いてより高分解能の数値モデルを用いた循環場の再現をおこなうダウンスケーリングにより、特定のイベントに関しては1kmスケールで日変動まで再現した精密なデータセットを作成することを目的とする。
また、本研究グループと生態系モデルの研究者が有機的に結びつくことにより、生態系モデルに対するデータ同化研究を推進し、観測データをもとにした生態系モデルにおける未知パラメータを改良したり、境界条件の推定により大気海洋間の物質フラックスについての解析などに発展することも期待できる。
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