研究課題名 A02-1 | 海洋表層における生物起源微量気体の生成・分解過程とその気候変化への応答 |
研究代表者 | 角皆 潤 | 北海道大学 大学院理学研究科 |
研究分担者 | 中川 書子 | 北海道大学 大学院理学研究科 |
| 谷本 浩志 | 独立行政法人国立環境研究所 大気圏環境研究領域 |
| 猪俣 敏 | 独立行政法人国立環境研究所 大気圏環境研究領域 |
研究概要 |
地球環境変化に対する海洋のフィードバック効果を定量化することが急務である。
そこで本計画研究では、強力な赤外放射活性を示したり有機エアロゾル核を形成したりするような大気化学的に重要で、かつ海洋がその収支に重要な役割を果たしていると考えられる微量気体(メタン・亜酸化窒素・水素・一酸化炭素・揮発性有機分子(VOCs)・含酸素揮発性有機分子(OVOCs)など)について、その海洋表層における生成(分解)過程の詳細や環境条件変化に対する生成(分解)量の応答を明らかにする。
具体的には、各海域の海水中に溶存する各微量気体の濃度および同位体組成の分布を明らかにすること、さらに各海域において採取した海水を環境条件を調整しながら培養し、これに伴って放出(吸収)されるこれら微量気体の生成(分解)量および同位体組成の時間変化を観測することを計画している。
本計画研究の遂行によって各種微量気体の放出量および放出過程、さらにその変動システムが既存の物理系・生物系あるいは化学系等のパラメータとリンク出来るようになることにより、環境変化の進行に対する海洋のフィードバックがこれまでに無い高い精度で定量化出来るようになることが期待される。
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研究課題名 A02-2 | 微量気体成分の海面乱流フラックス直接測定法の開発 |
研究代表者 | 塚本 修 | 岡山大学大学院 自然科学研究科 |
研究分担者 | 石田 廣史 | 神戸大学大学院 海事科学研究科 |
| 村田 昌彦 | 海洋研究開発機構 地球環境観測研究センター |
| 永尾 一平 | 名古屋大学大学院 環境学研究科 |
| 岩田 徹 | 岡山大学 廃棄物マネジメント研究センター |
研究協力者 | 近藤 文義 | 岡山大学大学院 自然科学研究科 |
研究概要 |
地球規模の気候変動を考える場合に,二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化のメカニズム解明はもっとも大きなテーマの1つであり,緊急に作業を進める必要がある。
しかし,地球上で最も広い表面積を占める海面と大気との二酸化炭素交換量の正確な把握はまだできていない。
また,他の地球温暖化気体については,さらに研究が遅れている。とくに大気中で硫酸エアロゾルを生成し、雲量をコントロールするといわれる「硫化ジメチル(DMS)」については最近注目されているところであり,この海洋からの放出量の評価が重要な問題と認識されるようになった。このような背景の下に,本研究代表者たちがこれまで進めてきた,海洋上を航行する船舶で「渦相関法」の手法を用いてこれら微量気体の海面交換量を直接測定し,吸収量・放出量を高精度に評価する手法を確立することが本研究の目的である。
この方法は陸上での二酸化炭素吸収・放出の測定には世界標準の方法としてすでに,広く行われるようになってきたが,海洋上への応用については世界的にも進んでいないのが現状である。
本研究グループではこれまでに海面上で渦相関法を適用できる,国内では唯一の研究グループとして実績をあげてきた。これまでは主として海面上での熱エネルギー交換量を中心に研究を進めてきたが,本研究により微量気体成分の海面交換量を高精度に測定できるような,また広く普及できるような手法を確立し,データを蓄積することが目的である。
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研究課題名 A02-3 | 海洋の温室効果気体の長期変動と気候へのフィードバック効果 |
研究代表者 | 渡辺 豊 | 北海道大学 大学院地球環境科学研究院 |
研究分担者 | 安田 一郎 | 東京大学 大気海洋研究所 |
| 鶴島 修夫 | 独立行政法人産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門 |
研究概要 |
地球温暖化予測モデルへの気候フィードバック効果の組み込みは、大気海洋物質循環モデルでは、物理諸過程の変動による二酸化炭素溶解度の変化のような単純なものが含まれているにすぎない。
ところが、近年、高緯度高生産海域では海洋表層成層化による栄養塩供給の減少によって単に植物プランクトンの減少が起こるばかりでなく、植物プランクトン種の急激な変遷が起きて、モデルには現在組み込まれていない長期のフィードバック効果が急激にすすんでいるとの指摘がある。
特に、栄養塩枯渇にともなうケイ藻などの大型植物プランクトンから円石藻などの小型プランクトンへの種の変遷で、大型であるケイ藻の減少に加えて、炭酸カルシウムの殻を持つ円石藻などが卓越すること(アルカリ度の減少)によって海洋の二酸化炭素吸収能を低下させて温暖化を加速するフィードバック効果(正のフィードバック)と、小型の種が卓越することで雲核となるジメチルサルファイド(DMS)が大量に放出され、温暖化を抑制するフィードバック効果(負のフィードバック)が大きい。
また、海洋成層化にともない、亜表層では温暖化物質であるN20やCH4生成が活発になり、大気への放出が増え正のフィードバックが促進される可能性もある。これらのフィードバック効果のモデルへの組み込みはまだ開発が始まったばかりであり、充分な信頼性を持つに至っていない。
その最大の原因は、温暖化に伴う物質循環の長期トレンドと気候変動成分の判別が未だ定量化されていないこと、植物プランクトン種・サイズや海水中のアルカリ度の変動との関係が不明な点、大気海洋循環の変動メカニズムが未だ不明なことにある。
また、CO2以外では、長期変動を明らかにするための綿密に計画された時空間的に密なDMS・N2O・CH4の実測データが極めて少なく、植物プランクトン生産や炭素循環変動にともなう気候へのフィードバック効果について、現場データに基づいた定式化を充分に行うことが不可能だった点に求められる。
そこで、本研究では、北太平洋に焦点を絞り、高緯度海域から亜熱帯海域の広範囲を対象領域として、長期変動メカニズム解明のための物理・生物・化学的総合観測を実施し、大気海洋循環ならびに物質循環の長期変動メカニズムについて明らかにすると同時に、長期時系列データを併用することで、物理・生物的な変動をとおしての温室効果気体であるCO2・DMS・N2O・CH4などの増減が気候へのフィードバックに与える効果を総合的に定量化し、定式化することを最終目的とする。
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